手フェチは静かに暮らしたい


吉良吉影を知っていますか。

杜王町で一番優雅で冷静な変態です。誰よりも静かに暮らしたい素敵な変態です。変態。何が変態なのでしょう。


彼は女性の手に強烈なフェチを持っています。



それはモナリザのふっくらとした手を見て勃起するほど。彼は女性の手と一緒にサンドウィッチを選ぶし、ポケットにいれて持ち歩くし、愛おしそうに撫でるし、お尻まで拭きます。彼はそれゆえに殺人を犯すし、それゆえに追われるし、それゆえに、、、、まあそこはいいでしょう。何はともあれ私が取り上げたいのは手です。手。吉良吉影が愛してやまない、手。どこがそんなに魅力なのでしょう。指?爪?関節でしょうか。それとも骨格?万人が持つ手は何故魅力的なのでしょう。

さあ、手の話をしましょう。


手というのは体の中で一番官能的だと思いませんか。体の部位の中で最も自由に動かせる場所でもあります。指先はバラバラに動くし、ねじったりひねったりもできる。またデザインが美しい。余計なものがありません。心霊写真や心霊映像で、よく、手だけのお化けが出てくることがあります。あれは手が持つ特異性によって成立するものだと思います。だってお腹や太ももだけが出ていたって滑稽なだけだと思いませんか。あの手のフォルムの美しさが存在を肯定しているのです。また、手は外界との繋がりです。私たちは手を使って、周囲とのコミュニケーションを測っています。手がメッセンジャーの役割をしているのです。その手の持つメッセージ性が、手だけの存在を成立させているのです。

手のひらの付け根から腕の真ん中をはしる骨の間の隙間は何て愛おしいんでしょうか。二つの茎状突起はどちらもくらくらするほど綺麗です。ふっくらとした第二関節は、手の甲に浮き出る骨は、何度見ても飽きることはありません。白くて長い指先が箸を持つ仕草を、バイオリンの弓を引く動きを、ギターの弦を抑える形を、あなたが関心を持って見ていないのなら、本当に勿体無いことです。あなたが電車に乗っている時、前に立つ女性の指がつり革を掴む仕草が世界で一番美しいかもしれないのです。手との出会いは一期一会です。機会は逃してはいけません。


昔、歪みの国のアリスという携帯ゲームがありました。その中で、精巧な形をした手のパンが出てくるシーンがあります。eat me というメモとともに置かれた手を見てアリスは驚くのですが、爪が薄い飴で作られているって描写があったのです。私はそこになんだかすごく惹かれてしまいました。あの小さな綺麗な爪は、薄い桃色の飴細工なのです。甘くて美味しい、繊細で、手荒く扱うと割れてしまう、飴細工。それが爪。あの美しい爪。それから私は、たまに綺麗な薄い爪を見るとぱきんって割れちゃうんじゃないかなってどきどきするようになりました。口に含んでみたい。だってきっと甘くて美味しい。でも割れてしまう。でも食べたい。食べてって言っているもの。派手な女の人の鋭くて長い爪は駄目です。男の人の、美しい、適度な長さの綺麗に整えられた爪がいい。長い指先についた、素晴らしい弧をえがいた薄い爪。舐めてみたいと思いませんか。


はたして吉良吉影を変態と言えるでしょうか。

彼はただ単に本能に忠実な素直な男だったのかもしれません。だって手の魅力の前では仕方ありません。美しい手の元では万人が平等なのです。美しいものは美しいし、美しいものは好きになってしまうし、好きになってしまうと手に入れたくなるし、手に入れたくなると、、、、、まあそこはいいでしょう。

何はともあれ手、手です。私が愛してやまない、手。

あなたはどこが魅力的だとおもいますか。どうしても分からないなら、私に一度、見せてもらえますか。


さあ手の話をしましょう。